02.01 DOOM いそげマイケル

DOOM~いそげマイケル

1989年(平成元年)2月1日~2月19日 パルコ劇場にて

(ファンクラブ会報 GORO CLUB Vol.27より)

2月1日始まったGORO君のお芝居、もう見ましたか? 始まるまでは一体どうなるのかな、なんて興味津々といった感じで待ちきれませんでしたよネ。タイトルが「いそげマイケル」なもんだから、えっ?、マイケル・ジャクソン? ホワッツ・マイケル? なんて。ここに出てくるマイケルは、そう、シャーロック・ホームズ並みの劇作家なんですネ。えっ!? 似てない!? ところが違うんですね。劇作家でもただの劇作家じゃないんです。途中、探偵に変わるんですネ。トレンチコートを着てマイケルのテーマと共に現われるんです。こんな感じで・・・。

ストーリーは核一戦争。題材は難しいので、一度見ただけではよくわからないと思う。普段聞きなれない言葉が宙を舞っている。GORO君の口から出てくる言葉、セリフの量の多さ、一つ一つ聞き逃さないようにするのはかなりの集中力が必要とされる。それでも二度、三度と見ていくうちに、見る側にも少し余裕ができてか、なかなかおもしろく感動さえ生まれてくる。ムリのない理解が、見るたびに見応えさを満喫させてくれる、喜びがあります。そして1部のコミカルな脚色が、2部には全面シリアスに変わるのです。

ここで簡単にストーリーを紹介します。
ここはパルコ劇場客席内。幕が上がり、第一幕GORO君のセリフ。ここからストーリーが始まる。GORO君の役は若き劇作家。美しい妻と可愛い子供を持つごく平凡な男。それが一転して窮地に落とされつつあるとは・・・。まだ知るよしもなかった。

ある日、フィリップ・ストーン(宝田明氏)がGORO扮するマイケル・トレントに仕事の依頼にやってきた。その男はここでは有名なるお金持ち。家のローンで苦しんでいたマイケルは、困ったような顔のフリをして(内心ウキウキ顔で)ひき受けた。前金は1万ドル(当時日本円で200万円位)。うまい話には何かあると、昔の人はよく言った。その通りこの依頼、やはりクセ者だった。タイトルは「END OF THE WORLD」世界の終末!こんなもの書けるはずがないと、オードリー(岡田莱苅子さんマイケルの作家業を助けるエージェント)に相談しに行くが、結局この仕事をひき受けるハメに・・・。その日から私立探偵まがいの日々が続いたのです。

核に対して皆さん考えた事がありますか?
遠いようで身近なはずの問題にもかかわらず、結局遠まきに見てしまうのが大半です。急に核について考えろといってもそんな簡単にわかるものではありません。マイケル同様、とりあえずはそれに関する書物を読むだけ。積もったものは机の上の沢山の本の山。知った事といえば紙に書いた核の知識だけ。そこでマイケルは核について近い人達に会ってみる事になる。

最初は核の専門家ウイルマー将軍、次に大学教授のベレント氏、ラストは戦争ゲーム屋のポールとジム。ちょっとコメディアンチックの2人に思わず笑いが。あっ 、あともう一人、それは謎の人物「ザ・シャドー」。極秘の内に行なわれた対談に、そこで知る事は・・・・。

1部の幕閉じが、いかにも次の展開はどうなるのかと、期待に胸いっぱい、ふくらませてくれます。15分間の休憩の後、第2幕の幕開け。場面は静かな郊外にあるマイケルのマイ・ホームです。マイケル・ストーン・オードリーの対決シーン。契約違反で1500万ドルの賠償で訴えたストーン、それを知らせにきたオードリー。話は目まぐるしく展開していきます。心の葛藤が、相手にぶちまける格闘のシーンに変わります。

筋道たてた説明、まずはストーンがマイケルに仕事を依頼した理由、依頼されてからのマイケルの行動、ザ・シャドー=ウイルマー将軍の裏で糸をひいてた人物、つまリストーンが望むもの、ストーンは言う「君の(マイケル)破滅だ」と。真実を知るにつれ、いたたまれなくなったオードリーが去り、いよいよ2人の対決。そして明らかにされていく過去。2人の出会い。

6年前、マイケルとアンの間に男児アレックスが生まれた。祝いにかけつけた友人達でちょっとしたパーティームードとなる。その時、何故かストーンの姿があった。誰が連れてきたのか。マイケルが友人に話をしているのを黙って聞いていた。ある日、そう、生後5日のアレックを置いてアンが外出した日、初めて2人っきりになったマイケルは少し不安感をいだきました。当時住んでいた所はマンションの20階。子供を抱いたマイケルが思った事は、ちょっとした好奇心。窓の外でもし手を離したら、この子ほ確実に死ぬ。抱いてはいけない好奇心。実行したら残るのはとりかえしのつかない後悔だけ。愛情しかないこの子への思いと、スリルにあふれた恐怖に、頼りきっている我が子の寝顔で、一時でもそんな好奇心をもった自分が信じられない、許せないと悲観し、起きるはずはないと思いながらも、その窓からできるだけ遠ざかるしかなかった。その時その話を聞いていたストーンが、マイケルの中に自分に似た何かを見つけたのでしょう。そして、ストーンのもつ恐怖への挑戦・好奇心が、世界の終末としてマイケルに関係していったのです。

全てが明るみになったあと、残すところはマイケルが書くシナリオだけ。書けるはずがない、書けるわけかないといったこの企画に「君しか書けない。いそげマイケル。しっかりやってくれ」のストーンの言葉。既にマイケルの頭の中にはプロットが組み込まれているのです。劇作家を主役としたプロットが・・・。

エンディングとなるひきぎわがとても自然で、バックに流れるピアノの音、タイプの音、マイケルの声。もう少し先を見たいな・・・という余韻さえ感じさせてくれます。せつなさを心情に残したまま終わるなんていう心憎い演出に、うしろ髪がひかれる思いでした。

こんな内容の展開でしたが、いかがだったでしょう。
見に来れなかった方の参考になったでしょうか?