02.09 (再) ブラック・コメディ

舞 台 ブラック・コメディー

1996年(平成8年)2月9日~2月18日 東京銀座・博品館劇場

(ファンクラブ会報誌 GORO CLUB Vol.86 より)

昨年、各地方をまわり、11月に博品館劇場にて、大好評のうちに幕が降りた「ブラック・コメディー」。しかし、その幕が降りないうちに再演する事が決定し、2月9日~18日に再び博品館劇場にて幕を開けることとなりました。

これまでの舞台では考えられない「明」と「闇」の逆転、初めはなんだか不思議な、ちょっととまどいを覚えてしまいましたが、ストーリーが進むにつれて、これがまた何とおかしいこと!! 舞台が明るくなって、本当は見えているのに、手探りで芝居をしている役者のひとりひとりの動きが、わざとらしいのだけれど、それが何とも言えぬ面白さなのです。

もう何度もご覧になった方もいらっしゃるでしょうし、パンフレット等でストーリーはおわかりだと思いますので、くわしい内容は省略するとしまして、順を追って面白かった場面や、ハプニングなどをお知らせすることにしましょう。

まずはプリンズリー(五郎)とキャロル(羽田)のふたりが登場、といっても暗闇の中。会話と足音だけでこれからどんな物語が始まるのか、何が行われているかを想像させていきます。この場面は本当にまっ暗なのです。五郎さんも羽田さんも、何度もリハーサルしているとはいえ、ぶつかったりせずに動いて、明るくなった時、ちゃんと立ち位置にスタンバイ出来ているのだからすごいナ~~。この場面でインパクトバッチリです。

パッと舞台が明るくなる。つまり停電なのだ。ヒューズやマッチ、ローソクを探すため、手探りで進み、わかっていながら璧にぶつかったり、倒れたり、かげんしているのかいないのか、それでもやっぱり痛そう、二階の住人ファーニバル(真屋)、キャロルの父メルケット大佐(蔵)も登場。今晩帰ってくる予定じゃなかったハロルド(笹野)が突然帰って来て、勝手に持ち出した家具などが見つからないよう、慌てるふたり。そのドタバタぶりが最高。ハロルドがマッチを持っていると言ってするのだけど、その度に吹き消してしまうプリン。その言い訳けがヒューズがとぶとガス漏れを誘発するとかで「停電がなおるまでマッチをするな」ってことわざがあるでしょう・・・・
だって。何のこっちゃっちゃ!!

ハロルドに気づかれないうちに家具を元に戻すシーンなんだけど、声を殺して、物音を立てない様、プリンがみんなの間をぬって一つづつ運び出す。持ち上げたイスの脚の間にハロルドの頭を通すところなんて、タイミングがバッチリで、なんだか感動しちゃいました。この頃から五郎さんはもう汗びっしょり。ひとりであっちにぶつかり、こっちにぶつかり、大熱演なんですから無理もないですよね。キャロルと婚約しているのに、そこへもと恋人のクレア(麻丘)が登場してきてまたプリンが大慌て。この日この場面でちょっとしたハプニング。羽田さんが一瞬セリフを忘れてしまったのだけれど、みんなでうまくカバーして無事にクリア! 羽田さん、慌てず、騒がずごまかし方がとってもうまかったです。初めての人は間違ったなんてわからなかったかもしれません。拍手ものでした(電気修理に来たシュパンヅィグ(藤村)を大金持ちの美術蒐集家のバンベルガーと間違えて、耳の遠い人だと聞いていたので、みんな大声で話しかける。藤村さんのヒョウヒョウとしたステキな味が出ていてここも大うけ!!

後半に入ってもまだまだ大うけ場面が続きます。事の真相を知って、ボウシにローソクを立てて、ハロルドが入ってきました。怒なりちらしたあげく「ワイドショー呼ぶゾー」の一言。そうこの日はあのウワサの記事が出た直後だったのです。これには本人もタジタジ。それを受けて「僕は無実だ!」のお答え。「芸能界に復帰出来なくしてやる、みんなバラしてやる」と口撃が続きます。ローソクを消され、居場所がわからなくなると、何かおもしろい事を言って笑わせて、つきとめようと、次に出た言葉が「どっちが怖い?ワイドショーとフォーカスの」そこまで言うか~~ってて感じですよネ。ファンにとってはキツイお言葉でしたが、ついつい一緒に笑ってしまいました。五郎さんごめんなさい。最後にやっと停電がなおり、シュパンヅィグが「光のおくりものをしましょう。私は神様の役です」と言っていよいよ明りがつき(つまりはまっ暗になるわけです)終演となりました。

この舞台を観て、本当に電気、明りって大切だなあと思いました。今の世の中、電気がなくなったら何にも出来ないですものね。

今回再演とあってか、少し余裕が出て細部にアドリブが入っていたみたい。前回以上に動きも激しかったし、より笑えた気がします。見えない芝居をしなくてはいけないのに、本当は見えてるよーってバラしちゃうシーンがあったりして、理屈なくおもしろいお芝居でした。

ここでご紹介した場面の他にも、いえ、どの場面をとってみても、すべておもしろかったし、その日その日でまた違ったアドリブやハプニングがあったことと思います。

毎日心から笑わせてくれて、観客ひとりひとりを明るい気持ちにさせてくれたことでしょう。共演者との息もぴったりだったし、またひとつ五郎さんの代表的な舞台・役になったことと思います。またいつか再演することを心より期待しています。