06. 帝劇6月公演「ロミオとジュリエット83

帝劇6月公演 ロミオとジュリエット '83

1983年(昭和58年)6月2日~27日

(ファンクラブ会報「Fellow」第53号 6・7月号より抜粋)

シェークスピアの名作、ライバル同士のモンターギュー家とキャピュレット家の若いふたりの悲恋物語り。
これを'83年として、現代的感覚で帝劇の舞台に再現したのが今回の「ロミオとジュリエット'83」

さて五郎君は、どんなロミオを見せてくれるかな、ちょっと覗いてみましょう。オープニング、さぞ、きらびやかなセットがあると思いきや、コンクリート的なイメージのシックの階段がシンプルにあるだけで、 思ったよりは地味かなという感じ。ロミオとジュリエットが出会うシーンも、ディスコ調の舞踏会で、白いミニスカートのジュリエットが かわいらしく踊っていたのが印象的。白いスーツに身を包んでいるロミオは、ただ茫然と踊るジュリエットを見つめている。 踊りが終わりピアノにもたれているジュリエットに近づき、甘くささやきく場面では、ロミオをになりきって自然にキザな言葉が 出ていましたよ。そして初対面で初めてのくちづけ。しかも2回です。最初からくちづけが2回もあって、ビックリした人も多かったかもしれませんね。 今の今まで、違う女性に恋していたロミオは、すっかりジュリエットのことで頭がいっぱい。その夜も帰らず、キャピュレット家の庭園で ジュリエットへの愛をささやきます。バルコニーでは、下でロミオが聞いているとも知らずに、無邪気にロミオへの愛をささやくジュリエット。ふたりの愛の長いセリフが飛び交うのですが、本当に相当キザと思われる長いセリフを、2人ともシリアスに、自然に観客を引き込んでいました。

舞台は変わって、近藤正臣さん扮するロミオの親友マキューシオと、細川俊之さん扮するティボルトの対決。2人とも、年を全然感じさせない 迫力ある格闘シーン。ロミオが止めるのもきかずに、チェーンとナイフで戦う2人。しかもロミオがその中に割って入ったすきに、ティボルトのそのナイフはマキューシオに。哀れマキューシオは死んでしまい、ロミオは親友の死に嘆き、哀しみ復讐を誓う。一旦は逃げたティボルトも、意気揚々と戻ってきて、ロミオとティボルトの激しい格闘シーンに突入。手に汗握る格闘は、2人とも本当に大丈夫かなぁと思わせるほど、 上になり、下になり、見る人の瞬きさえ許さないようす。

ついにロミオの復讐のナイフは、何回もティボルトの体に。ティボメトを殺してしまったロミオは追放を命じられ、ローレンス神父の下に 身を潜めている。ジュリエットのことを思い、泣き、自分の身の不運を思っては嘆き、気の弱さを五郎君はしっかり表していたみたいです。 そんなロミオをロレンス神父とジュリエットの乳母が叱咤激励し、ロミオはジュリエットのもとへと急ぐのでした。

舞台は薄暗いライトに照らされたベッド。いよいよロミオとジュリエットの愛のシーン。上半身裸の2人が寝ている。やがてひばりが鳴き、朝が来たことを告げる。別れを惜しむように何度もくちづけを交わす。やがて乳母の声が聞こえて、いよいよ別れの時。しつこいほどくちづけを繰り返し、 ロミオは朝靄の中へ。ロミオとジュリエットの愛のシーンも覚めやらぬうちに、ジュリエットの縁談が持ち上がる。しかも今日が月曜日なのに、木曜日に挙式という早さ。ロレンス神父に助けを求めにジュリエットは行くが、大変勇気のいる計画を教えられる。それはいったんジュリエットを死なせて、再び息を吹き返した時に、ロミオと共にヴェローナの町から脱出していくという、うまく行けばこの上なくHAPPYな計画。しかし失敗するとすべてが 絶望的な結果となってしまう。
思い悩んだ末、ジュリエットは毒薬を飲みほして死んだ状態になっている。結婚式はお葬式と化し、いつしかロミオのもとへも悲しい知らせが舞い込む。不運にもロレンス神父の大切な手紙はロミオのもとへは届かず、何も知らないロミオはジュリエットの棺のもとへ。そこにはひと足早く、婚約者だった パリス伯爵がいて、やはり格闘になってしまう。またひとつ罪を犯してしまったロミオ。

ジュリエットに優しく語りかけるようにして、自らの命を断ってしまうロミオ。コトリともしない客席も思わずロミオの死のシーンには 涙を浮かべる方があちこちで見られました。しばらくしてロレンス神父が駆けつけ、おりしもジュリエットが目を覚まし、ロミオを 探すのですが、横に倒れているロミオを見て、哀しみの最高潮。ロミオの唇から毒薬を移して死のうとするジュリエットは、悲しく痛々しく、傍にあったロミオのナイフで自分の胸元を一突きに。

こうしてロミオとジュリエットは抱き合うよう神に召されて、2人の短かった愛は永遠のものとだったのです。いたずらな世間に巻き込まれ、なくてもいい両家の対決の犠牲になってしまった若い恋人たち。後日、ロミオとジュリエットの銅像が広場に建てられた。両家も和解し、 この物語りは終わりです。これからこのような事が起こらないように、この銅像は見守っていくでしょうね。

やはり感動的なクライマックスのシーンでは涙があふれて、胸がキュンとしてしまいました。 見事に主役の2人は、ロミオとジュリエットを演じ、客席の拍手は、なかなか鳴り止まなかったのです。 それにわきを固めている出演者も、時にはコミカルに、時にはシリアスに、ぐんぐん見る側を引きつけるに演技で最高でした。ちょっと後になってしまいましたが、音楽はほとんど佐藤寛さんのオリジナルで、迫力あるロック、流れるようなバラードと、生演奏で聴かせてくれました。バンドはGOROバンド。これからも千秋楽まで、まだまだ続きます。

 

(ファンクラブ会報「五郎」第44号 昭和58年8.9.10月号より抜粋)

もうひとつの「ロミオとジュリエット'83」

★6月2日~27日まで42回という長い公演中、1回だけ悪い病気が出てしまいました。 ズボンのファスナーがしっかりと開いたままだったのです。マーキョシオとの長い台詞のシーンで 全然、気がつかずに座り込んだりして芝居して、後ろに向きを変えて舞台から去ろうとした時に 初めて気がつきましたけど、、、、遅かった。

★ティボルトとの格闘シーンで、チェーンを交わそうと飛び跳ねたとき、ズボンのお尻がビリッと 大胆に破れてしまいました。さぁ困った。この先、ティボルトを階段の中央に追い詰めるシーンが あります。お尻を客席に隠すようにはすに構えて、なんとかこのシーンは終わりました。 しかし20センチは破れたのじゃないかな、、、

★ロミオが追放されてから「ジュリエットが死んだ」と聞かされたとき、本当に大粒の涙が ロミオの頬に流れました。クライマックスシーンでも、自然と涙が、、、

★ロミオとジュリエットが死んで銅像になり、その銅像の前で大公が台詞を間違えて、すごく 可笑しかったのだそうです。だけど銅像だから動いちゃいけない。必死に笑いをこらえるのに 一苦労で、身体はユ~ラユラと揺れていたそうです。

★ジュリエットが毒薬を飲んで死ぬシーンでは、牧師様が拾わなければならない毒薬のビンを 乳母が蹴っ飛ばしてしまい、慌てて元の位置に戻したそうです。GOROバンドの場所からこの 一部始終が見えていて、笑いをこらえるのが大変だったということです。

★キャピレットの「おやすみ」という台詞の後、音が出るようになっていたのですが、間違えて 「おはよう」と言ってしまったので、一瞬、キッカケを逃してしまい、音が少々、遅れたそうです。