- ブラックアント
- トライ・ア・リトル・テンダネス
- キープ・ミー・ハンギング・オン
- イー・ライズ・カミン
- アイ・ラブ・ユー・セザン・ユー・ネバーノゥ
- 君が美しすぎて
- 告白
- 枯れ葉のいつわり
- おとなの愛
- 愛さずにいられない
- 愛ふたたび
- こころの叫び
- 愛の肖像
- 夕暮れのブランコ
- あなたの手紙
- ア・ソング・フォー・ユー
- アドロ
- 甘い生活
- ア・ソング・フォー・ユー
- 見果てぬ夢
- マイ・ウェイ
ファンクラブ会報「五郎」第11号 昭和50年1月発行より
11月9日、この日、東京は冬。暗く低い灰色の雲がさらに厚く垂れ、時々小雨を交えながら、横に、縦にと吹きつける北からの風。四角な柱をそこから斜めに切った格好の、巨大な白い建物は、あまりにも、デンと腰を据えた面がまえにある種の戸惑いと、ダークグレーの季節の中にあって、凛としたすがすがしさを感じさせる。
五郎は中野サンプラザをこんな風に感じながら楽屋へ入っていった。安定剤代わりにコーヒーを少し薄めに2杯続けて飲んで、第1回目の幕開きを待つ。デビューして3年。地方公演や、毎年の夏の縦断コンサート、国際リサイタルなど、大小のステージに立ち、歌い、踊り、演奏して、それでもショーの初日は、第1回には、ドキドキガタガタ。幕開きの1曲、次の1曲、夢中で歌っているうちに、バッグの音が聞こえ、自分の声をつかみ、次第に客席が見えてくる。
「リハーサルを念入りにやっても、客席にお客さんが入ってやっと幕が開く。ミーティングを重ね、最後の音合わせを合わせをして、OKのサインを出して、舞台に立つでしょう。これでもか、これでもかってやっても、まだまだ奥があるんだね。昨日より今日、今日より明日って具合いに。初日がリハーサルってことはないよ。リハーサルは、自分で納得のできるまで何度でも繰り返しやり直しができるけど、初日でも、中日でも、楽の日でも、1度幕が上がったら、その時、その場が勝負。そして客席に座ってる人が審査員。僕じゃない。リハーサルとは違うよ。」